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デスクセットアッパー
翁(おきな)
オッキーナ
ガジェットが好きな38歳/ ブロガー歴8年/ レビュー数390品以上(うちイヤホン180種類以上)/ Xフォロワー数8,200人突破/ YouTubeチャンネル開設(奮闘中…)/ 【ネオジャパンデスクセットアッパー】と称して日本みのある独自のデスク環境を構築中/ 普段はサラリーマン/ 4児の父/ “みんなといっしょ”が苦手なタイプ
今回はiBassoから新たに登場したドングルDAC「DC-Tonfa」についてレビューしていく。
ぱっと見DC-Eliteと瓜二つなビジュアルで、しかもe☆イヤホンとのコラボモデルってことで、正直「ちょっと音質変えただけのパチモンでしょ~。e☆イヤホンさん、やっちゃってんな」って舐めてかかったんだけど、存外そうでもなかった。

平たくいうと、DC-TonfaはDC-Eliteと見た目こそいっしょだけど中身がまったく違う亜種。
スライムとスライムベス。いや、ドラキーとタホドラキーっていうくらいちがう。単純に似てるってだけじゃなくアプローチも違うから性質そのものが異なる存在っていうのが正しい。
ひいては、ほかのどのDACとも違うまったく新しい性質が体感できる新しいドングルDACだったからレビューしていく。
商品提供:MUSIN
ΔΣ方式競争からの脱却。新星「iBasso DC-Tonfa」

「正直なところ、ドングルDACってやつはどれも“いかに音をキレイに出力するか、原音に忠実か、扱いやすいか”ってところで勝負をしていて、1個あれば十分。たしかに違いはあるけど少し飽きてきた。」
そんな、潜在的に感じてたレベルで言語化できてなかった感覚がDC-Tonfa登場と同時に露見した。
ドングルDACのほとんどがΔΣ方式っていう同じ土俵内で造られてる。こういったら超失礼だけど、団栗の背比べ。(いや、ビジネスってそういうものか?)
ΔΣは小型化しやすいってことで、ドングル化するのに都合がいい。だから市場に出てるドングルDACはΔΣ方式が主流。DC-Tonfaの兄モデルDC-Eliteも中身はROHM社の高級ΔΣ系チップ。
いっぽうでDC-Tonfaはその背比べに参加してない。別の方式、『8chフルバランスR2R方式』。だから耳に新鮮な風を入れてくれる。

話を主役に戻そう。
DC-Tonfaは、スマホに繋いで持ち運ぶことができるドングルDAC&。
最大の特徴となるのは、内蔵している8chフルバランスR2R DAC回路。
MUSINでは以下のように解説している。
DC-TonfaのR2R DACには総数312個のViking製、低温度係数・高精度薄膜抵抗器を使用し、緻密なR2R抵抗ネットワークを構築しています。
60個の高精度抵抗で構成されたハードウェア抵抗補償ネットワークと、FPGAによる補正アルゴリズムを組み合わせることで、抵抗誤差や温度ドリフトを緻密に制御しています。
つまり、DACチップをポンと載せたわけじゃなくて、大量の抵抗を使ってDAC回路そのものを組んで、それをDC-Eliteと同じサイズの筐体に詰め込んでる。
「R2Rをドングル化する」って、文字で見る以上にだいぶ手間暇かけた脳筋なことをやってる。
【R2Rとは】
デジタル信号をアナログ信号へ変換するDAC方式のひとつ。R(抵抗)と2R(その2倍の抵抗値)をはしご状に組んだ抵抗ネットワークによって電圧を生成する。現在主流のΔΣ方式とは仕組みそのものが異なり、高精度な抵抗を多数必要とするため、小型化や精度管理のハードルが高い。オーディオ製品では「滑らか」「自然」「アナログライク」などと言われることが多い方式。




筐体はアルミ合金とガラスパネルでできている。DC-Eliteとおなじ形・おなじサイズ感(61×34.6×15mm)だけどDC-Eliteはチタン合金製なので持ったときの重みがまったく違う。Tonfaのほうが断然軽い。

あと、DC-Tonfaはディスプレイも搭載。
一部設定も本体から変更できるから、ディスプレイ搭載はうれしい。

さらに、出力は4.4mmバランスで最大800mW+800mW。この数値、前回レビューしたTOPPING DX1 IIと近い出力をドングルDACが持ってる。高インピーダンスヘッドホンも難なく音量を確保できることになる。
シンプルにすごい。

さらに、本パッケージにはDC-TonfaをiPhone裏にくっつけるべくMagSafe対応ケースが同梱されている。これがアツい。
磁力はそこまで強力じゃないし、ホールド力もあと一歩だから要アプデだけど、単体販売されればDC-EliteユーザーもNunchakuユーザーも幸せになれると思う。



ポリリズムをほんとにポリリズムにする驚愕のサウンド
これまでのDACが“音をいかに美しく再現するか”ってところを重視してるのに対してDC-Tonfaは“いかに音楽を楽しむか”に全振りしている印象。そのくらい性質から異なる。
いちばん違いを感じたのは、クラブ系・EDMを流した時。

特にPerfumeの『ポリリズム』とかYOASOBIの『夜に駆ける』とかは個人的に昔から嫌いで、圧があって、シンセが鋭くてキンキンなるし、情報量多すぎて落ち着かないからイヤホンのレビュー用としてだけしか絶対聴かない。
でも、DC-Tonfaはそれを一変させた。
音の立ち上がりが自然でエッジが丸くて、滑らかで、あのキンキンしてたポリリズムがほんっとに聴きやすくなるの。ほんとポリリズムよ。「ほんとに同じスマホから出た音かこれ!?」って二度見したもんTonfaを。

でもイヤホンとかにある寒色・暖色っていうような大きな括りともまた違う。
音源の解像感とか、グルーヴは崩してない。ただただ、聴きやすくなってる。
あとこれ不思議なんだけど、Shanling MG200 Dark SpaceとかKiwi EarsのSeptetといったオープンバックIEMで聴くとDC-Elite以上に立体感を感じられる。

一瞬真空管DACと同じ質感かなと思ってNunchakuとかとも聞き比べたけど、どうも同じじゃあない。どちらも性質としてはアナログライクな音ではあるんだけど、ぜんっぜん違う。
真空管DAC経由の音は全体的に温かみ全開で、低音はぼわついてボーカルは艶があって、たしかにEDMでも低刺激で聴きやすいんだけど、同時にEDMの良さでもある明るさとキレの良さを殺してる感覚も得られる。
いっぽうでDC-Tonfaは過度なエッジを丸くしながらも、EDMのキレと明るさは殺さない。むしろ活かす方向に持っていってるの。
優しいけど温かみとはちょっと違う。「低刺激なのにグルーヴが立ち上がる」っていう聴いたことない感覚。

これね、僕が感じたままいうと真空管DACって、基本ほかといっしょでチップ搭載モノだから結局真空管の役割って後付けなんじゃないかと思う。でもDC-Tonfaは根本的にこれまで聴いてきたDACとは音色がちがう。
- 真空管DAC→足し算
- DC-Tonfa(R2R)→引き算
なんじゃないかなと。これなら納得がいく。
だって、同じ音源なのに聴きやすくて、でも情報量はそのままで解像感も高くて、奥行きがイメージングできるくらいはっきりするって、足し算じゃできないよね?

DC-Eliteほか複数のDACとDC-Tonfaで聴き比べた結果の感想だから、それがΔΣ型ICチップと8chフルバランスR2R DACの性質の違いだと思う。
いずれにしても『ポリリズム』をあんなにも音楽として楽しめるようになったんだもの。素直にうれしいよね。
気になるところ
本体、小さくはない

本体サイズは言うまでもなく“ドングルDAC”っていう認識で向き合うと大きいよね。「持ち運びやすーい」じゃあない。MagSafeケースがあるけれど。
ただ、個人的にはすんごく好きな音だったからDC-Tonfaに関しては持ち歩きたい意欲はDC-Elite以上に強い。
スペック的な背景を加味すると、「据え置きDAC級を持ち歩ける」っていうオーオタにしか通用しないステイタスもプラスされるから前向き。
組み合わせるなら寒色系イヤホンと

あと、これ大事だと思うんだけどDC-Tonfaはぜひ寒色系イヤホンと組み合わせてほしい。
今回いろいろなIEMで視聴したけど、体感だともともと暖色傾向強めの音のイヤホンと合わせるとちょっとボヨンボヨンした音になる。DC-Tonfaも中音に厚みがあるから中音過多になるんだと思う。
Shanling MG200 Dark Spaceとか、TANCHJIMのNORAはもともと高音の主張結構あるタイプだから相性良かった。あと、ゼンハイザーのIE100Proがとんでもないくらい聴きやすくなったから激おすすめ。

「新しいドングルDACの可能性」を知るに最適なステップアップ材料

最終結論、DC-Tonfaは初心者にはおすすめしない。
中~上級者のほうが幸福感を得られる製品だなっていうのが率直な感想になる。
翁のさいしょのドングルDACがDC-TonfaだったとしたらたぶんDC-Tonfaの魅力は理解できなかったと思う。「R2R、ふぅんそうなんだ」止まり。それならよっぽど1万円台の手ごろなドングルDACを3個買ったほうが満腹感が得られる。
DC-Tonfaは、ほどほどにドングルDACを経験して、ほどほどにIEMを経験して、なんならドングルDACの背くらべにちょっと飽きてきたなってユーザーが「新しいドングルDACの可能性」を体感するのに最適なステップアップ材料だ。


